無限と有限の対比が美しい~マスターのままごと vol.9~

 

 

『海の上のピアニスト』という映画があります。

 

 

海の上で生まれた主人公が、生涯その船から降りずに過ごし、その船がなくなるまでピアノを弾き続けるという物語です。不朽の名作です。

その名作の映画のワンシーンで、主人公が初めて船から降りようとするとき、つまり地面に足をつけようとするとき、彼は降りることができず船に戻ってしまいます。彼の旅立ちを応援した仲間は、なぜ降りれなかったのか彼に聞きます。そして、彼は答える。

 

 

「あの大きな街・・・終わりがなかった。終わりは?教えてくれ。どこで終わるんだ?タラップまでは、よかった。さっそうとコートを羽織って、カッコよかった。降りることは平気だった。それは問題なかった。問題は目に映ったものではなく、映らなかったものだ。分かるか?あの巨大な都会・・・すべてがあったが、その終わりは?終わりはどこに?すべてのものの行きつく先がみえなかった。世界の終わりが。ピアノは違う。鍵盤は端から始まり端で終わる。鍵盤の数は88と決まっている。無限ではない。弾く人間が無限なのだ。人間の奏でる音楽が無限。そこがいい。納得がいく。あのタラップで目の前に広がっていたのは、制限なく続く何千万何億という鍵盤だった。無限に続く鍵盤。無限の鍵盤で人間が弾ける音楽はない。ピアノが違う。神のピアノだ。あの街を縦横に走る数え切れないほどの道。その中から1本の道を選べるか?1人の女、1軒の家、自分の土地、自分の見たい景色、自分の死に方。終わりのない世界が上からのしかかってくる。そこで生きていく?考えるだけで恐怖に潰されちまう。僕はこの船で生まれた。世界がここを通りすぎていく。だが1回に2000人づつだ。ぼくだって夢を描いた。だが舳先と艫の間に収まる夢だ。無限じゃない鍵盤で自分の音楽を創る幸せ、それが僕の生き方だった。陸地?僕には大きすぎる船だ。ぼくには美しすぎる女。長すぎる船旅。香りの強すぎる香水だ。僕には弾けない音楽だ。僕は船を降りられない。だから人生を降りるほかない。

 

 

このセリフに、人生の美しさが凝縮されている。無限と有限こそが、世界一美しいコントラストかもしれないと気づかされる、名シーンでこざいます。

 

 

自分の人生を振り返り、哲学してみると、無限と有限の組み合わせに美しさを感じたことをたくさん見つけれるはずです。

 

2泊3日の旅で、景色が綺麗だった。

彼女と朝までいたかったのに、明日の用事があるため終電で帰った。

カフェで音楽を聴いているとき、いつのまにかコーヒーを飲み終えた。

 

 

そのようなシーンで、あなたは美しさを感じたことはありませんか?

哀愁にも似た、孤独にも似た、限定的で、個人的な感情。それは人間という無限があってこその美しさです。この世に無限のものは、人間の心以外あるとしたら宇宙ぐらいです。いや、宇宙も滅びるときがいつか来るかもしれないので、「無」の世界になるかもしれませんね。でもそれって、無限とイコールになってしまうので、やっぱり人間の心ではないでしょうか。

 

 

生活の中で、無限と有限のコントラストを見つけてみましょう。芸術関連は、それが見つけやすいでしょうね。楽器は有限ですからね。お仕事だとどうでしょう。技術職の人は、道具が有限。営業職の人は、商品が有限。なにもしていない人でも、1日という有限があります。

 

 

人間の心を「無限」にしなくても別に問題はありません。

ある人にとっては、「大空」が無限で、その中を飛ぶ鳥が「有限」かも。

ある人にとっては、「花の香り」が無限で、それを香りを詰め込んだ香水が「有限」かも。

 

 

人それぞれ、素敵な夢や現実がある。もちろん、美しさもです。

日常の些細なことを、五感で感じましょう。

 

 

その先に何か、「無限」と「有限」が同居しているかもしれません。

 

 

【今回のおすすめPV】

Flying Lotus – Never Catch Me ft. Kendrick Lamar